【2015.12.3】研修レポート(2015.10.26)災害に強い地域づくり

以下のセミナーに参加しました。

1.平成27年度「市町村議会議員特別セミナー・~災害に強い地域づくり~」

2.平成27年10月26日(月)13時30分~16時45分、27日(火)9時~12時

3.市町村職員中央研修所(市町村アカデミー)

4.内容

1)講演「日本の火山活動と防災」

 静岡大学防災総合センター教授 小山真人氏

(1)   火山の噴火と加害現象

(2)   対策先進例としての富士山

  富士山の地下深部でおきる低周波地震を研究し、ハザードマップを作成
(富士山ハザードマップ検討委員会)
噴火警戒レベルに立ち入り規制のレベルを加えた
(急にレベル3になると登山者が困るため)

富士山の噴火が発生すると、場所により溶岩が流れる方向が変わる。
広域避難者の受け入れ地域を静岡県、山梨県も決めている。

(3)   火山の恵みと私たちの暮らし

  ジオパークの取り組み
   大地(ジオ)が生んだ資産を保全、活用、地域振興する。保全には防災も含む
   相容れない防災と観光をコラボし、楽しみながら知らず知らずに災害に強いまちづくりをする。防災を防災と言わない、まちづくり

2)講演「災害時の要援護者支援」

 跡見学園女子大学観光コミュニティ学部教授 鍵屋一氏

(1)自分のところが被害を受けた時、「受援」を考えておく

 受援の計画、支援の計画、両方を作らないと大災害に備えることはできない
 Ex. 神戸市は受援計画を作った

(2)東松山市の復興が早い理由

  地域活動が活発なところに助成する
  復興計画を立てる前に住民からいろんな聞き取りをした。その計画の同意率は8割

(3)災害の想定を作ったから想定を超える被害になった

  ご遺体の対応、道路を開く、避難所の支援、物資の分配
・・・職員がまずする最低4つのこと
  死者が多いということは、生き残った人への支援が薄くなることを意味する

(4)要援護者リスト

  見附市が平成16年の豪雨の時の対応を反省に、手揚げ方式から同意方式に変え、
  一人の要援護者に2~3人のサポーターをつけるようにしている
  役割をつけないと要援護者(他人)の家の中に入れないので、サポータと位置付ける
  また、要援護者の名簿は変わっていくので、一人の職員を名簿管理に張り付けている

(5)要援護者を支援者にする

  要援護者であってもできることがある。人のためにする人(支援者)にする

3)講演「災害時の議会の役割」

 山梨学院大学法学部教授 江藤俊昭氏

(1)災害時、議会(議員)が邪魔になっている

  議員が直接、個別に行政に要求しても対応できない
  議会は人格を持ったものであり、単なる議員の集まりではない
  阪神淡路大震災の時、芦屋市議会の場合、毎朝9時に議員が集まって、地元の状況を報告しあい、議長がまとめて行政に伝え、行政からの情報を議員に伝えることを2~3週間続けた。

(2)議会は多様性を持つ 世論形成ができる

  選挙で選ばれた議員=地域リーダーの中のリーダー 非代替性
  一方、市長は独任制

(3)議会基本条例に災害対応を書く

  東日本大震災以降、議会基本条例に

①危機管理の項目を入れないとだめ。入れているかどうかは、議会が現実に災害のことを考えているかどうかにかかわる。

②自治体間連携(協力)が書かれていることが重要(必要)

 三重県議会基本条例にはすでに書かれている
議会基本条例と自治基本条例は別物ではなく、議会を中心に据えた自治基本条例を定めることが大事である。

(4)先進的な議会の実例

  大津市議会では議会BCPを策定し、実際に計画に連動して訓練と年1回の見直し
   災害時の議員からの報告フォーマットを作っている。議員の安否確認も記載する
   防災グッズを全議員に配っている

(5)まとめとして

  災害だけを取り出して議論するのではなく、
議会として、地方創生計画、総合計画など地域経営として考えるべきである。

3)講演「東日本大震災 被災地・南相馬市議会の経験とこれからの防災対策」

   南相馬市議会 議長 平田 武氏

(1)3月11日発生時

  議会開催中であったので、議員の安否確認は必要なかった

(2)3月15日 市議会災害対策会議を任意で発足(議会開催、議決できないため)
  4月14日まで、毎日10時に集まって、それ以降は週2日集まって、収集した情報の共有、市民からの要望を集約・整理して、行政の災害対策本部へ情報として提供

(3)5月11日には特別委員会を設置し、正式に議会としての組織的活動を開始
  避難所の現地調査、遠く離れたところ以外、50人以上の避難者がいる避難所には県外も含めて調査に行った。
  仮設住宅現地調査。

(4)   国や県、関係機関へ要望書を提出

(5)   原発事故からの教訓
   原子力防災計画の必要性 10キロ圏外であっても、風向きによって被害・影響
   警戒区域等の指定は、直線距離による同心円ではなく、気象条件や実態に即したものが必要。また区域指定により市が分断されたことから、指定は市町村単位が基本

(6)   支援は垂直支援ではなく、水平支援(自治体スクラム支援)を

5.感想・考察

 2つ目の講演者である鍵屋氏は、元板橋区職員として、議会事務局、防災担当であった。
東日本大震災にも応援に行き、その経験をもとに話されたので、具体的でわかりやすかった。

 江藤氏の講演で、人格を持った議会として、計画を立て、実際に動くよう訓練することの重要性を再認識した。先進事例である大津市議会や板橋区議会、また芦屋市議会の例も教えていただいたので、ぜひ吹田市議会も習って災害時の対応を考えたい。

 「考えること」と「できること」は違う。考えてもいないことはできるはずがない。
 議会総体として、今、できることから始めたいと思う。まずは、総合計画への議会のかかわり、議会としてのBCPの作成などなど、しなければならないことはたくさんある。

以上